トピックス
胆石は胆汁のなかに含まれているコレステロールなどの成分が固まり、結晶となったものです。胆汁は肝臓で作られ、胆嚢(たんのう)で濃縮されて総胆管を通って十二指腸へ流れます。胆嚢内にできた石を胆嚢結石、肝臓内の胆管にできた石を肝内胆管結石、胆嚢から総胆管に落ちてきた石(落下結石)と、総胆管そのものにできた石(原発結石)を総胆管結石といいます。
総胆管結石症とは、肝臓から十二指腸に至るまでの胆管の途中に、結石ができてしまう病気のことをいいます。症状が全くない場合もありますが、立ち上がれなくなるほどの激痛がみぞおちに走ることもあります。また、放置すると石がつまって腹痛、吐き気、嘔吐を引き起こします。さらに悪化すると胆管に感染が生じ(胆管炎)、腹痛、発熱、黄疸の3つの症状がおこることがよく知られています。
当院における治療について
内科医が担当する内視鏡的治療(代表的なものは内視鏡的乳頭括約筋切開術)と外科医が担当する手術的治療(腹腔鏡下胆管結石切石術、胆嚢摘出術の同時手術)があります。当院では、メリットの多い手術的治療を積極的におこなっています。
手術的治療のメリット
手術的治療には、以下のメリットがあります。
①乳頭機能が確実に温存できる
胆管の出口に乳頭括約筋という筋肉があり、十二指腸へ流れる胆汁を調節しています。内視鏡的治療は、この乳頭を広げたり切ったりして石を取り除くため、多少なりとも乳頭機能は低下します。乳頭機能が低下すると、胆管結石が再発、胆管炎の原因となります。一方で、手術的治療は乳頭を全く触らないため、乳頭機能が確実に温存できます。
②全治療期間が短縮できる
内視鏡的乳頭括約筋切開術で胆管結石を摘出した場合、のちに胆嚢を手術で摘出する必要があります。数回の入院を必要とするため、治療期間として約1ヶ月は必要です。その点、手術的治療は1回の入院・手術で胆嚢と結石を摘出しますので、全治療期間は1週間で済みます。
手術的治療は、全身麻酔が必要なため全身状態が悪い方には行えない場合があります。また、高度な手術技術が必要であるため、一般的にはおこなわれていません。当院では、外科と内科が常に協議しながら最適な治療方針を決定し、十分な訓練と経験を積んだ外科医が執刀します。
手術の内容
当院の手術の方法は、腹腔鏡下胆嚢摘出術と同じ創でおこなっています。全身麻酔下で、おへそに1cmの創をあけ、ポートとよばれる筒を挿入し、そこから腹腔鏡とよばれるカメラを出し入れします。右の上腹部に5mmのポートを3カ所追加し、そこから鉗子やはさみを用いて操作します。胆嚢を摘出したあと、胆管をはさみか電気メスで切開し、胆道鏡と呼ばれる細い内視鏡を駆使して石を除去します。その後に、胆管切開部を細い糸で縫合します。術後の経過を見て、5~7日で退院できます。
当科の手術成績
当院では6年間で約403例の「腹腔鏡下胆管結石切石術、胆嚢摘出術の同時手術」をおこなっています。平均手術時間は約3時間で、術後在院日数は、平均は6日(全国平均は1~2週間)です。退院後、胆管結石再発をフォローするため、1年ごとの通院を勧めています。
年度 | 実績件数 |
2018 | 66件 |
2019 | 83件 |
2020 | 62件 |
2021 | 58件 |
2022 | 75件 |
2023 | 59件 |
当院の胆石に関する業績
【書籍】
・胆道外科におけるCチューブ法ハンドブック:藤村昌樹 医学書院 2005年
・2023年版 技術認定取得者のための内視鏡外科診療ガイドライン:千野佳秀 松本直基
【論文発表】
・内視鏡的アプローチが困難な急性胆管炎に対する緊急腹腔鏡下胆管切開結石摘出術
の検討:松本直基 日本消化器外科学会会誌;2024
・胆道の解剖生理・疾患・検査・治療・ケア Q13~15 :嶌岡成佳 消化器ナーシン
グ 2023
・Cチューブを用いた総胆管結石症に対する腹腔鏡下総胆管切開切石術:千野佳秀
手術;2009
【学会発表】
・当科の腹腔鏡下胆管切開切石術と技術認定取得までの道のり:松本直基 日本内視鏡外科学会;2024
・術中胆道造影で発見した無症状総胆管結石に対する一期的な腹腔鏡下総胆管結石除去術の検討:松本直基 日本胆道学会;2024
・内視鏡的アプローチが困難な急性胆管炎に対する緊急LCBDEの検討:松本直基 日本胆道学会;2023
・腹腔鏡下胆管切開切石術における切石困難例に対してEHLにより治癒した3例:嶌岡成佳 日本腹部救急医学会;2022
・偽胆石性胆嚢炎・胆管炎に緊急腹腔鏡下胆管切開切石術を施行した1例:嶌岡成佳 日本臨床外科学会;2021
・急性胆嚢炎に対する早期手術の術式別、重症度別検討:松本直基 日本胆道学会;2021
・胆管結石の治療における当院の腹腔鏡下手術の成績:松本直基 日本消化器関連学会;2019
・総胆管結石治療のベストプラクティス 当院での10年間の成績:千野佳秀 日本消化器外科学会;2019
・腹腔鏡下総胆管切石術(LCBDE)による切石困難例に対する治療戦略:千野佳秀 日本消化器外科学会;2017
・総胆管結石への挑戦 ラパコレからLCBDEへ:千野佳秀 日本消化器外科学会;2017
・腹腔鏡下総胆管切石術の定型化へ向けた当院の取り組み:高山昇一 日本内視鏡外科学会;2016
・腹腔鏡下総胆管切石術が標準術式となるために:千野佳秀 日本内視鏡外科学会;2015
・腹腔鏡下総胆管切石術のピットフォール:千野佳秀 日本内視鏡外科学会;2014
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