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いぼ痔(痔核)とは
いぼ痔は、医学用語では「痔核(じかく)」と呼ばれています。いぼ痔には2種類あり、直腸と肛門の境界(歯状線)より内側にできたものを「内痔核」、外側にできたものを「外痔核」といいます。
いぼ痔の症状には、排便時に血がポタポタたれたり、シャーっと出血するなどがありますが、内痔核、外痔核によって症状は異なります。
いぼ痔の原因について
いぼ痔(痔核)の原因として一番多いのは、便秘や下痢などにより、肛門のクッション部分に負担がかかり、うっ血などにより血の循環が悪くなって症状が悪化することです。予防には、普段から便秘や下痢にならないよう注意します。長くいきむのもよくありませんので、5分以上トイレで座っている方は要注意です。自然な排便を心がけるようにしましょう。
内痔核とは
直腸側には知覚神経(痛みを感じる神経)がないため、ここにできる内痔核は初期症状で痛みを感じることはありません。そのため、排便時に内痔核に便が当たって出血し、便器が赤くなって初めて痔核に気付く場合があります。いぼが大きくなると、排便時に飛び出してくるようになり、それで気付く場合もあります。 肛門内から飛び出したいぼは、最初の頃は自然と肛門内に戻ります。進行すると指で押し込まないと戻らなくなっていき、症状が悪化すると排便に関係なく飛び出した状態(脱肛)になります。脱肛の状態になると、絶えず粘液や便がしみ出すため、下着が汚れるだけでなく、肛門周辺の皮膚が炎症を起こすようになります。この状態になると、便器が真っ赤になるほど大量に出血することがあります。この時点では指で押し込めることもありますが、そのうち押し込んでも戻らなくなっていきます。
内痔核の状態と症状について
内痔核の進行度はいぼ痔の脱出程度によって以下の4段階に分けられ、段階に応じた治療法を選択します。
Ⅰ度
いぼ痔がまだ比較的小さい初期の段階で、肛門から外に飛び出すことはありません。知覚神経のない直腸粘膜に生じたいぼ痔なので痛みはありませんが、便による刺激で排便時にたびたび出血します。
Ⅱ度
うっ血を繰り返して徐々に大きさを増したいぼ痔が、排便時に肛門から脱出するようになります。ただし、排便後には自然に肛門の中へと戻ります。排便時に出血したり、残便感を覚えることはありますが、痛みはほとんどありません。
Ⅲ度
排便時に肛門から飛び出したいぼ痔が、指で押し込まないと肛門の中に戻らなくなります。また、くしゃみをしたり、重い物を持ち上げたりした拍子にも飛び出すようになります。
Ⅳ度
排便等のきっかけに関係なく常にいぼ痔が肛門から飛び出したままになり、指で押し込んでも元に戻りません。出血はおさまることもありますが、腸内から流れ出た分泌液や便で下着が汚れたり、そのせいで肛門の周囲に湿疹が生じて痛がゆくなることなどがあります。
嵌頓(かんとん)痔核とは
通常の内痔核では、かなり進行した場合に脱出した痔核を指で押し込んでも肛門に戻らなくなることがありますが、進行状況とは係わりなく押し込んでも戻らなくなることがあり、こうした状態を「嵌頓痔核」と呼びます。これは、痔核の根元が肛門括約筋で締め付けられ、うっ血したことにより起こっています。特徴は腫れと激しい痛みです。内痔核は通常、痛みがないのですが、嵌頓痔核の場合、幹部が大きく腫れて激しい痛みが起こります。さらに表皮が破れてしまうとかなりの出血が起こり、手術が必要になることもあります。
外痔核とは
外痔核は、歯状線と呼ばれる直腸と肛門のつなぎ目の外側にできる痔核(いぼ痔)であり、ここには知覚神経があるため、多くのケースで痛みが症状として現れます。中の血が固まって血豆のようなものができると、激痛が起こります。肛門外側にできる外痔核は、指で触れて簡単に確認できます。
血栓性外痔核とは
肛門のまわりにアズキ大の黒っぽくて硬いイボができるのが血栓性外痔核です。症状としては、ズキズキと激しい痛みがあります。静脈で血が固まって血栓ができた状態であり、歯状線より下にできるため知覚神経があって痛みが伴うのです。特徴としては、突然起こることがあげられ、テニスやゴルフなどのスポーツ中、排便時の強いいきみ、重いものを持ち上げたなどのきっかけにより発症することがあります。血栓性外痔核では、数日後に出血することがあります。
いぼ痔の治療
内痔核の治療
まずは保存的療法としてお薬(内服座薬や軟膏)と排便管理による治療を行います。それで小さくならない場合には、手術(結紮切除法)、またはジオン注射療法といった外科的措置を検討します。
外痔核の治療
お薬による治療では完全になくならず、生活にご不便があったり、不快感が続く場合には、手術で切除することをおすすめしています。
切れ痔(裂肛)とは
切れ痔は裂肛、裂け痔とも呼ばれ、肛門の外傷だと言えます。硬い便が肛門から出る際に切れることが多いのですが、頻回の下痢で肛門上皮が切れることもあります。
排便時に起こる痛みを避けたいと思うあまり便意を我慢してしまうと、便秘になってより排便に苦痛が生じる悪循環も起こりやすく注意が必要です。
切れ痔の原因
切れ痔の最大の原因は便秘であり、これは痔核と同様です。便秘になると、便が硬くなってスムーズに排便できません。そのため強い腹圧をかけて、無理に押し出そうとすると、硬い便が無理に肛門を通過し、歯状線の外側の肛門上皮がその圧力に耐えきれなくなり、裂けてしまうため、ピリッとした痛みが走ります。また、下痢も切れ痔の原因になります。これは、水分の多い便が肛門粘膜に浸透して炎症を起こしやすくなり、粘膜を弱くしてしまうことがその原因です。特に、慢性の下痢症になると、肛門上皮は常に水様の便にさらされるため、粘膜もダメージを受け続け、便が通るちょっとした刺激ですぐに切れてしまいます。切れ痔は、女性に多い痔だとされています。これには、便秘や出産のときに腹圧をかけすぎることが関係していると言われています。
切れ痔の治療(保存的療法)
切れ痔の治療は、基本的に薬物療法であり、適切な治療を受け、正しい排便を心がけるようにすることで改善する場合がほとんどです。
初期の切れ痔では、緩下剤・血行改善薬・抗炎症剤などの内服薬と軟膏・座剤などの外用薬だけでほとんどの場合、改善します。
慢性の場合は、痛みがなくなった後も、数ヶ月はお薬を続けてください。
慢性の切れ痔で肛門ポリープや見張りイボを伴う場合、薬物療法だけでは不十分なケースも多く、完治には手術を受ける必要があります。また、肛門がひどく狭くなった場合には、根治のために手術が必要です。
切らない内痔核治療 ジオン注射
内痔核(いぼ痔、脱肛)の治療として、最近注目されているのが硬化療法のジオン注射です。ジオン注射は持続性(根治性)があることが大きな特徴となっています。日帰りで治療を受けられることから、手術に代わる治療法として期待されています。
ジオン注射(ALTA療法)とは
「ジオン」は、ALTA(Aluminum Pstassium Sulfate Hydrate Tannic Acid 読み方:アルタ)、硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸水溶液の製品名です。これは、2005年3月に登場した硬化剤であり、内痔核に注射することで、痔核を固めてしぼませ、痔核の脱出や出血症状を改善します。
ジオン注射の治療方法(四段階注射法)
「四段階注射法」という特殊な手法で投与を行う必要があります。内痔核一つにつき、痔核上側の粘膜下層→痔核中央の粘膜下層→痔核中央の粘膜固有層→痔核下側の粘膜下層という順番で、計4ヵ所に注射します。正しい場所に正確な量の薬液を注入するには技術と経験が必要であり、「四段階注射法」は日本大腸肛門病学会に所属している、痔核治療の経験が豊富で「四段階注射法」の講習を受けた医師のみが施行可能です。当院はもちろん、この基準をクリアしています。
ジオン注射の効果
注射した直後から痔核へ流れ込む血液量が減り、翌日には出血が止まり、脱出の程度も軽くなります。時間の経過と共に痔核は次第に小さくなり、それに伴って引き伸ばされていたクッション部分の支持組織が元の位置に癒着・固定していきます。症状などにより個人差はありますが、ほとんどの場合、約1週間~1カ月で脱出がみられなくなります。
ジオン注射のメリットとデメリット
メリット
・今までなら手術で治療する必要のあった一部の内痔核が、注射によって治療できます。
・手術のような切除の必要がなく、痛みや出血もほとんどないので、身体的・精神的な負担が軽度で済みま
す。
・手術のようにお仕事や学校を長期で休む必要がなく、治療時間も短いので、日常生活への支障が最小限で
済みます。
・健康保険などが適用される保険診療にあたるので、治療費が比較的安価で済みます。
・別の病気のために抗凝固薬や抗血栓薬を服用中の方でも、服用を休まずに受けることができます。
デメリット
・基本的に脱出が認められる内痔核に施行可能です。脱出の程度や状態によっては手術など他の方法が必要
になります。
・注射後の副作用として、注射箇所の痛み、排便時の出血、発熱、血圧低下、肛門部の違和感、排便がしに
くいなどの症状が一時的に現れる場合があります。
・1年後の再発率が約16%と、手術の約3%に比べてやや高い結果が報告されています。
ジオン注射を受けられない方
・妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性のある方
・小児
・前立腺がんで、放射線治療を受けたことがある方
・潰瘍性大腸炎の方
・透析治療を受けている方
・嵌頓痔核
・外痔核
・全身状態が不良な方
受診日
切れ痔・痔核は、第一東和会病院 肛門外来(火曜日、水曜日)で診察しております。ご相談される方は、以下の番号にお電話いただき、ご予約をお願い致します。
初診時選定療養費ついて
初診時に、他の医療機関等から紹介状をご持参されない場合は、初診時選定療養費として、7,700円をお支払いいただきますのでご了承ください。